長屋解体は慎重に! 長屋の解体工事の法律上の注意点と施工方法について


複数の住戸が壁を隔てて横並びに連なる「長屋」は集合住宅の一種で、日本の伝統的な建物です。下町を中心に多く建てられている長屋は、一階建てのものが大半ですが、近年は2階建ての長屋である「テラスハウス」も増えてきています。

こうした長屋の解体工事では、建物全体を取り壊すニーズだけでなく、一部住戸だけを解体したいというニーズも少なくありません。そうした解体は、一般的な家屋の解体と比べて難易度が非常に高いものになります。長屋の解体方法や法律上の注意点などについて、みていきましょう。

なぜ長屋解体は慎重に行う必要があるのか?

「長屋の一部解体はとても難しいものであり、慎重に行う必要がある」といわれます。その最も大きな理由は、長屋という建物が、隣接する住戸と壁を共有しているという点にあります。

長屋は、横に長い一棟の中を壁で区分して、それぞれ一つの独立した住戸としています。つまり、長屋の中の一つの住戸を解体するとしても、壁の向こうは別の住戸であり、壊すわけにはいきません。解体工事で生じる騒音や振動などもトラブルのもとです。

また、一部の住戸の解体が、長屋の建物自体の強度に影響することも考えられます。そうしたことから、長屋を切り離すような解体工事については「長屋の各住戸の所有者の4分の3以上の合意」と「隣人の合意」が必須であると、「区分所有法」という法律で定められています。

長屋の解体方法とは?

長屋の一部住戸を解体して建物を切り離すような解体工事では、「切り離し解体」と呼ばれる方法がとられます。切り離し解体に際しては、建物の柱や梁、屋根裏の状況を事前調査して、どの柱を残し、どのように補強すればいいかを見極める必要があります。

作業手順や補強内容を検討したら、長屋の各住戸の所有者に説明して同意を得ます。解体工事では、隣接する住戸に損傷が起こらないよう十分配慮しますが、それを証明するための証拠写真なども事前に手配しておくことになります。

建物の解体作業自体も、残さなければいけない柱や隣接住戸に影響を及ぼさないよう慎重に作業しなければなりませんので、重機でスピーディーに壊すということが難しくなります。そのため、手作業で対応する部分も多くなる傾向にあり、その分作業にコストがかかることにもなります。

壁を共有している場合にはさらなる費用も…

このような事情から長屋の一部解体は割高になることが多く、その費用もケースバイケースです。長屋が鉄骨造やコンクリート造であれば、費用はさらに高額になります。そしてもう一つ、隣接する住戸と壁を共有している長屋では、「隣接住戸の外壁補修費用」もかかります。

切り離し解体では、解体する住戸と隣接する住戸を仕切っていた壁が新たな“外壁”となります。しかし、壁をそのまま残すだけでは雨水も浸入しますし、強度も十分ではありません。そこで、壁が外壁として機能するよう補修を施すのです。

補修内容としては、隙間をコーキングなどで養生してふさぎ、その上から建材を張り付けて補強します。こうした補修は最低でも「現状と同程度」にするのが解体工事の依頼主の責任とされ、その補修費用は依頼者が負担するのが一般的です。

この補修費用は意外と高く、建物の解体工事自体の費用よりも高くつくようなケースも珍しくありません。とはいえ、長屋の切り離し解体のために解体しない住戸の所有者の同意を得るためにも、長屋の解体において外壁補修は切っても切り離せない要素です。

おわりに

一般的な住居を取り壊す解体工事でも、隣家との距離が近いケースでは近隣に与える騒音や振動といった影響も大きく、万が一にも損傷などの被害を及ぼさないためには入念な準備と熟練した技術、十分な配慮が必要となります。

長屋の一部分だけを取り壊すような解体工事では隣家との距離がゼロであり、気をつけるべき点も一層多くなります。外壁補修が必要になる点も一般的な解体工事とは異なりますし、長屋の建物全体に与える影響も考慮しなければなりません。

そのように難しく、費用が高額になる解体工事を無事に終えるためには、信頼できる解体業者を選んで納得のいくまで相談し、無理のない計画を立てていきましょう。


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