そこまで恐がる必要はない? 塗装業におけるアスベストの危険性について


重大な健康被害を引き起こす物質として一躍その存在を知られるようになったアスベスト(石綿)も、かつては数多くの建材に使われていました。そしてその建材は、住宅や商業ビルといった建物から学校や自治体といった公共施設まで、幅広い建物に活用されていたのです。

アスベストの新規使用が全面的に規制されている現在、アスベストの被害に最も直面しやすいのは、解体工事を請け負う作業員の方々だといわれています。ところが、塗装業に従事する方にとっても、アスベストの危険性は人ごとではないのです。その危険を未然に防ぐために、その危険について理解しておきましょう。

塗装業がアスベストを心配する理由とは?

建物の屋根や外壁などを塗装するような仕事に就いている方々は、建物を建てたり取り壊したりするわけではありませんし、その建物に長期間滞在するわけでもありません。ですから、アスベストが使われた建物が残っているといっても、その危険はあまり関係ないように感じるかもしれません。

しかし、アスベストが使われている屋根や外壁を再塗装するような場合にも、アスベストの健康被害リスクを被る危険があるのです。屋根や外壁を再塗装する際には、表面の汚れを取り除くために高圧洗浄を行います。その高圧洗浄で、アスベストが飛散してしまう危険があるのです。

もしそうなってしまえば、塗装の仕事をしている方はもちろん、住人の方や近隣の方々にアスベストの健康被害が及んでしまう危険が生じることになります。古い建物の塗装については、アスベストの使用状況をしっかり調べておくことが肝心です。

塗装業界でのアスベスト使用について

塗装業とアスベストの関係は、「アスベストが使われた建物の塗装」だけではありません。なぜなら、アスベストは建材だけでなく、塗料自体にも使われていたからです。

外壁の表面を仕上げるための吹き付け塗料、塗膜防水剤、上塗材、さらには、下地工事で使われる下地材や下地調整剤といったところまで、アスベストは実に多くの場面で使われていたのです。

現在新たに製造・販売されている塗料や関連資材にはアスベストは使われていませんが、過去にアスベスト含有塗料を使っていた建物や外壁が今も残っていることは珍しくありません。そうした建物を再塗装するようなケースでは、アスベストのリスクが隣り合わせということになります。

実は心配無用 アスベストについて

とはいえ、そのようなリスクがあるからといって、ただちに健康被害が心配になるというわけではありません。それには、アスベストの危険が生じるメカニズムが関係しています。

天然の鉱物繊維であるアスベストは非常に細かく、使われた建材が取り壊されるなどしてその粉じんが空気中に飛び散ると、人がアスベストの繊維を吸い込んでしまいます。吸い込まれたアスベストは分解・排出されにくいため体内に止まり続け、最終的に健康被害を引き起こす原因となるのです。

つまり、アスベストが体内に取り込まれて初めて健康被害の危険が生じることになり、建材に閉じ込められたままになっていれば健康被害のリスクは低いといえます。そして一般的に、屋根材や外壁材、塗料などに使われたアスベストは比較的飛散しづらい性質をもっています。

したがって、アスベストが強く固着しているようであれば、すぐに空気中に飛散する危険は低いとみられます。ただし、屋根材・外壁材のコンクリートやセメント、塗料などが経年劣化で脆くなっている場合は、アスベストの飛散リスクがそれだけ高まることになりますので、注意が必要です。

おわりに

「現在使われている塗料にはアスベストは使われていないのだから、塗装しているだけならアスベストの被害は関係ないだろう」と思われることも多いかもしれませんが、塗装が必要になるのは新しい塗料を使った新築の建物だけではありません。

塗装業に就いている方も、塗装作業を依頼する方も、あるいは自分の家を自分で塗装しようと考える方も、その塗装作業とアスベストの危険が無関係ではないということを認識することが最初の第一歩となります。

そのうえで、目の前にあるアスベストの危険性がどの程度なのかを正しく見極め、そのリスクに適切に対処していくことが重要なのです。


関連する記事