「NET金額」「グロス金額」とは?ややこしい見積書の項目を徹底解説

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建物の解体工事を依頼する際には、前もって費用の見積もりをしてもらうことになります。その見積書によく使われるのが「NET金額」という言葉です。同時に「グロス金額」「見積金額」などの言葉が使われていることもあります。

「NET金額」「グロス金額」「見積金額」といったそれぞれの項目には、いずれも異なる金額が書き込まれており、どの言葉が何の金額を示しているのか、最終的に支払うのはどの金額になるのか、正しい知識が無ければワケが分からなくなってしまうでしょう。

ということで解体にかかる費用を正しく把握するために、この「NET金額」について理解しておきましょう。

NET金額とは

経理や営業などの仕事に就いている方は、「NET(ネット)金額」という言葉を目にすることも少なくないのではないでしょうか。建物の解体工事においても、この「NET(ネット)金額」という言葉は見積書でよく使われています。

しかし、この「NET金額」という言葉には、実は厳密な定義はありません。建物の解体工事の見積書にこの「NET金額」が記載されている場合には、主に次の2種類いずれかの意味で使われていることが多いとされています。

(1)値引き分などを差し引いた最終価格

諸経費や消費税などを含んだトータルの金額から値引き分などを差し引いた、依頼主が最終的に支払う金額です。つまり、「この金額まで値引きすることができますよ」という意味であると理解できます。

(2)解体工事の原価

解体工事で生じる費用としては、解体工事自体にかかる費用に加えて、元請け会社から下請け会社に対するマージンや手数料などがあります。この工事自体の費用のみを指した工事原価をあらわす言葉として「NET金額」が使われる場合があります。

(2)の意味で「NET金額」が使われていた場合、依頼主が支払う金額とは異なってくるので注意が必要です。

NET金額の意味合いは業者で異なる

「NET金額」という言葉には複数の意味合いがあり、この言葉をどのような意味で使っているかは、見積もりを出した解体業者によって異なります。

見積書に「NET金額」と書かれていたとき、その金額が支払うべき総額を意味していることもあれば、実際に支払う金額はそれ以上になることもあるというわけです。

その場合は、「NET金額」がどういう意味の、どの範囲の金額を示すものなのかを解体業者に確認し、最終的に支払うべき金額をはっきりさせることが大切です。

「金額で比較」は要注意!

解体業者から見積もりをもらったら、まず気になるのが「その金額が安いのかどうか」ということですよね。複数の会社に見積もりを出してもらって比較する場合にも、その金額の多い少ないだけを見て判断してしまいがちです。

実際には、見積もりがあまりにも安すぎる業者は要注意。請求金額が安いということは、コストをおさえなければ赤字になってしまいます。そのために本来必要な手順を省略したり、不法投棄を行ったりする心配が考えられるのです。

安かろう悪かろう!?

最初の見積もりこそ安いものの、あとから理由をつけて追加請求をすることで、最終的な請求金額を高額にしようと考えているかもしれません。

適切な見積もりを行う解体業者でも本当に追加作業が必要になり、費用が追加になるケースはありますが、その場合にはあらかじめ工事の依頼主に連絡が入り、追加作業の必要性を確認したうえで作業にかかるのが一般的です。

ところが、悪徳業者の追加請求では、工事が終わってから「工事の途中で地中埋設物が見つかったので撤去しておきました。その分の費用を請求します」と事後報告するのです。工事後に報告されても、依頼主はその作業を確認できませんよね。

このように、安すぎる見積もりには、安すぎる理由があるものなのです。見積書の金額をチェックする際には、そうした点を考慮しておきましょう。

グロス金額との違い

「NET金額」と対になる言葉として、「グロス金額」という言葉が使われることがありますが、これは前項(1)にある「諸経費や消費税などを含んだトータルの金額」として使われるのが一般的です。

たとえばグロス金額が10万円、NET金額が8万円という見積もりの場合、2万円の値引きがなされており、依頼主が支払う金額は8万円ということになります。

とはいえ、もちろん見積時に必ず値引きがある……とは限りません。値引きがない場合の見積もりは、グロス金額=NET金額となることだってあり得るでしょう。

ちなみに、「グロス」「NET(ネット)」という言葉はゴルフでもよく使われます。実際に打った数が「グロス」とされ、プレーヤーの技量に応じて設定された「ハンディキャップ(ハンデ)」を打数から差し引いた数がスコアになります。

このとき、「NET(ネット)」はグロスからハンデを差し引いて計算したスコア上の打数を示します。

一括見積もりにも注意を!

解体業者に見積もりを依頼するには、何らかの方法で解体業者をピックアップして1社ずつ連絡し、現地調査や見積もりを依頼するというのが基本的な流れです。

とはいえ、解体工事のことをよく知らない依頼主が解体業者をピックアップするのは難しいですし、1社ずつ連絡するのも大変ですよね。そこで、「一括見積もりサイト」を活用するという方法があります。

一括見積もりサイトでは、Webサイトで見積もり内容などを1回入力するだけで複数の解体業者から見積もりを受け取ることができ、とても便利です。しかも、利用は無料…と言いたいところですが、実は“からくり”があります。

一括見積もりサイトを経由した見積もり金額には、サイトが得る手数料が含まれているのです。一般的には、見積もり金額の10%程度が見積もりサイトの収益になるといわれています。

もちろん、一括見積もりサイトを使うことで工事の依頼主も解体業者もメリットを得ているわけなので、一括見積もりサイトが収入を得るのは当然ともいえます。しかしながら、そうした金額になっているという点は知っておいたほうがいいでしょう。

最終的には解体事業者に確認を

先に述べたように、NET金額という言葉がどういう意味で使われており、その金額が何を示しているかというのは、見積書を作成する会社によって異なるというのが実状です。

そのため、「NET金額」を最終支払額だと勘違いしていたら、それは実のところ工事原価で、支払う金額はもっと多くなった……ということもあるといいます。同様に「グロス金額」についても、上記以外の意味で使う会社もあるかもしれません。

そのような事態にならないようにするため、見積書に複数の金額の記載がある場合は、それぞれの言葉と金額が示す内容を解体事業者にきちんと確認することが重要です。

おわりに

解体工事には少なくない費用が生じることになります。そのため、費用の見積もりには慎重な事前確認が求められることになり、見積書に接することも増えるでしょう。

その見積書の内容を正しく理解するためには、「NET金額」「グロス金額」「見積金額」などの言葉が指し示すものとその金額の意味をきちんと確認する必要があります。

内容を正確に理解することで、支払うべき金額を把握できるだけでなく、値引き交渉の判断材料として適切に活用することもできることになります。その観点でも、確認を怠らないようにしましょう。

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