アスベストが原因で法改正! アスベスト被害を抑えるために改正された大気汚染防止法と改正内容について
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かつては「奇跡の鉱物」と呼ばれ、建材などに重宝されてきたアスベスト(石綿)。今では、人が体内に吸い込み長期間溜め込み続けてしまうことで、肺がんや悪性中皮腫といった非常に重い健康被害を引き起こすことが広く知られており、「静かな時限爆弾」とも称されるようになりました。
今ではその使用が実質的に全面禁止されているアスベストですが、その健康被害のリスクは今もゼロではありません。そうした危険性の被害を最小限に食い止めるために継続して「大気汚染防止法」などの法改正がなされ、安全対策の手順の整備が続いているのです。
大気汚染防止法とは?
アスベストと法改正について理解するため、まずは「大気汚染防止法」について一通りおさらいしておきましょう。「大気汚染防止法」とは1968年に制定された法律で、大気汚染を防止して大気環境をいいものに保ち、国民の生活環境や健康を保護することが目的です。
大気汚染につながる物質にはさまざまなものがありますが、その多くは工場や事業所といったところから大規模に排出されて空気中に飛散する大気汚染物質です。大気汚染防止法では、そうした工場や事業場などに対して、大気汚染物質の排出基準を定めています。
日本では、大気や土壌、水といった環境に対して、人の生活環境や健康を保護するうえで維持することが望ましい目標として、「環境基準」を定めています。大気汚染防止法で定められている排出基準も、大気における環境基準の目標がベースになっています。
アスベスト飛散を防ぐために大気汚染防止法が改正
現在の大気汚染防止法では、物が燃焼したときに発生する「ばい煙」、有機化合物が気体の状態で飛散した「揮発性有機化合物」、物を壊すなどして飛散した「粉じん」、継続的に取り込まれることで健康被害が生じるおそれがある「有害大気汚染物質」、自動車などの運行で発生する「自動車排出ガス」を規制しています。
しかし、最初からそのような内容であったわけではなく、日本社会の変化や公害問題の発展に伴い数々の改正がなされ規制が強化されてきたのが、この大気汚染防止法という法律です。そしてアスベストの規制も、この大気汚染防止法と深く関係しています。
大気汚染防止法で規制されているのはアスベストの排出・飛散量です。1989年にはアスベストなどの危険物質は「粉じん」のなかでも「特定粉じん」に分類され、工場・事業場からの排出基準が設けられました。
その後も、アスベストの健康被害の深刻さが知られるにつれ、アスベストの飛散を防止するための規制も強化されていきました。特に重視されるようになったのが、アスベストが使われた建物を解体する作業です。こうした作業ではアスベストの大量飛散を招くおそれがあることから、「特定粉じん排出等作業」として規制対象となっていきました。
改正された大気汚染防止法について
アスベストに関連する大気汚染防止法の改正で近年行われたものとしては、2014年から施行された改正があります。この改正の背景にあったのは、解体工事によってアスベストが飛散したと推測される事例の増加です。
家を取り壊す解体工事では、建材に含まれるアスベストが粉状になって空気中に飛び散ってしまうリスクが高まります。しかし、解体する建物にアスベストが使われているかどうかをきちんと調べず、アスベストの飛散防止措置が不十分なまま解体工事が行われ、アスベストの飛散を招いてしまったのです。
また、解体工事を依頼する発注者(施主)がアスベストの飛散防止措置の必要性を正しく理解しないまま、解体業者に対して短期間・低コストでの工事を求めることも、こうした状況に拍車をかけたとみられています。
こうした状況を改善すべく、法改正では「特定粉じん排出等作業を実施する際の届出義務者を工事の発注者(または自主施工者)とする」「工事を請け負う解体業者はアスベストの使用有無を事前に調査し、それを発注者へ説明するとともに工事現場に提示することを義務とする」などの変更がなされています。
おわりに
解体工事では多くの粉じんが舞い散ることになり、現在はその被害を最小限におさえるためのさまざまな対策が定められています。そうした粉じん問題のなかでも、アスベストの飛散はとても深刻な問題であり、入念な対策が求められます。
解体工事を依頼する立場、解体工事を請け負う立場、解体工事が行われている建物の近所に住んでいる立場……いずれにしても、アスベストが法律でどのように規制されているかを知っておくのは、自分や関係者の身を守るために重要なことといえます。