300箇所以上も! ごみ焼却施設の解体問題と、未解体施設の現状について
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高度経済成長期に建てられた商業ビルから、日々続々と建てられてきた木造住宅まで、築年数が経過して老朽化した建物を解体したいというニーズは日本の至るところで増えています。アスベストが使われていた古い建物を解体する必要に迫られているというケースもよく聞かれます。
その一方で、同じように解体について問題となっているのが、ごみなどの廃棄物を焼却処分する廃棄物焼却施設の解体です。解体を迫られながら実現に至っていない廃棄物焼却施設は、日本全国に数百箇所にも及ぶといわれているほどです。廃棄物焼却施設の解体問題についてみていきましょう。
全国に数百箇所もある未解体ごみ焼却施設
少子高齢化が急速に進んでいる日本では、放置されたままになっている空き家が都市部から限界集落まで各地で増加しており、深刻な社会問題となっています。そうした情勢下では自治体の税収増加を見込むこともできず、自治体の対応が手薄になる部分も生じてしまっています。
そのうちの一つが、廃棄物焼却施設(ごみ焼却施設)の解体です。環境省の調査によれば、日本で稼働中のごみ焼却施設が1211箇所であるのに対して、すでに稼働しておらず不要となっているごみ焼却施設は322箇所に及びます(いずれも2011年度末時点)。
そうしたごみ焼却施設は、本来であれば解体するべきですが、さまざまな事情から取り壊しが先送りされているのが現状です。その背景には、ごみ焼却施設の解体ならではの難しさがありました。
ダイオキシン類対策特別措置法について
「ダイオキシン」といえば、ごくわずかでも人間の体内に入ってしまえばがんや奇形といった重篤な健康被害を引き起こす有害物質です。そのダイオキシンが発生する原因の大半は、廃棄物の焼却によるものです。
そうした状況を重くみた政府は、2000年に「ダイオキシン類対策特別措置法」を施行しました。この法律では、ごみ焼却施設などに課す排出ガスなどの規制を強化しており、その規制をクリアできないごみ焼却施設には解体・更新などの対応を義務付けたのです。
この規制を受け、稼働を継続できなくなったごみ焼却施設が増えましたが、こうしたごみ焼却施設を解体・撤去するためには、ダイオキシン対策をとりながら解体工事を進める必要があり、その作業には時間や配慮、数億円規模ともされる多額の費用が必要となります。
財政難という事情をかかえる自治体はそうした解体費用を負担することができず、解体工事のめどをたてられないまま、ごみ焼却施設を休炉状態にして放置せざるを得ないのです。
焼却施設解体に向けた動き
2013年に総務省が全国の自治体を対象に実施した調査によれば、自治体が解体・撤去を検討している公共施設は全国に1万2000件余り存在し、それらの解体・撤去に必要な費用は概算で4000億円を超えると見込まれました。そのうち最も多かったのが廃棄物処理施設でした。
また、民間企業が余裕する小型の焼却炉でも同様の問題を抱えていることが指摘されています。公共施設と異なり、行政の目が届きにくい民間の施設では、その危険性の放置になかなか手を打ちづらく、周辺への汚染を危惧する声も高まっています。
このように解体・撤去の需要が高まっている状況を受けて総務省は2014年に法律を改正、公共施設を解体・撤去するための費用の4分の3までの地方債の発行を認めました。こうした動きのもと、ごみ焼却施設の解体・撤去が進んでいくのかどうか、引き続き注目が集まります。
おわりに
危険性の高い有害物質であるダイオキシンの規制は、人々が安心して暮らすためには重要なことです。しかし、そのかげでは、不要となったにもかかわらず解体の進まないごみ焼却施設が“負の遺産”として取り残されています。
こうした施設を解体することになれば、その作業に当たる担当者がダイオキシンの被害を受けたり、あるいは工事によってダイオキシン汚染が広がったりすることのないよう、作業には慎重を要します。
そのようにダイオキシン対策を講じながらごみ焼却施設を解体・撤去するのは容易なことではなく、過疎化、財政難といった問題をかかえる多くの自治体では解体に多額の費用をかけられないとして手をこまねいている——これがごみ焼却施設の未解体問題なのです。