PCBって何? 古い蛍光灯の安定器には有害物質が含まれている! PCB解体時の費用と注意点について
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住宅や商業施設など、さまざまなところでLEDの照明に接することが増えました。長持ちするLEDは、量産されて比較的安価で購入できるようになるにつれて、急激に普及してきたのです。今では、蛍光灯を目にすることのほうが少ないという方もおられるかもしれません。
そんな蛍光灯のなかでも、古い蛍光灯器具には「PCB」が含まれているものがあり、その有害性について懸念が広がっています。照明器具を安全に使うために、あるいは万一PCB使用の蛍光灯に対処する必要が生じたときのために、PCBと蛍光灯の関係について理解しておきましょう。
PCBとは?
「PCB」とは「ポリ塩化ビフェニル」という有機塩素化合物の略称で、化学的に合成された物質です。その成分構成により209種類の異性体がありますが、それらポリ塩化ビフェニル化合物の総称が「PCB」とされています。
このPCBは、耐熱性・不燃性や電気絶縁性、非水溶性といった数々のすぐれた性質をもち、無色透明で化学的にも安定していることから、幅広い用途で活用されてきました。たとえば、塗料、印刷インキの溶剤、変圧器・安定器・コンデンサといった電気機器の絶縁油、ノンカーボン紙、熱交換器の熱媒体などがその一例です。
しかしその反面、PCBには毒性もあります。PCBは体内に取り込まれやすく、そのまま体に残ってしまいやすいのです。そうしてPCBが体内に少しずつ蓄積されていくと、皮膚障害などのさまざまな症状を引き起こしてしまいます。
PCBのなかでも「コプラナーPCB」と呼ばれるものは特に毒性が強く、「ダイオキシン類」として総称されるものの一つにも含まれているほどです。そのように人体に対して悪影響を及ぼす危険が判明したPCBは、今では製造が禁止されています。
古い蛍光灯の安定器が危ない理由
前述のとおり、PCBは安定器(コンデンサ)という器具にも使われていました。その安定器を使っていたものの一つが「蛍光灯」です。
具体的には、昭和32年1月から昭和47年8月までに製造された照明器具のうち、会社や学校の教室などで使われていた蛍光灯器具、道路や天井に用いられていた水銀灯器具、トンネル用の低圧ナトリウム灯器具の一部に使われていたことが判明しています。また、こうした照明器具は、昭和51年10月までに建築・改修された建物で使われている可能性があるとされています。
一般家庭用の蛍光灯器具にはPCBは使われていませんが、通勤・通学先の建物でこうした照明器具が使われていたり、長期的に保管されていたりするケースは現在でも可能性があり、PCBによるリスクの拡大懸念や適正管理の徹底が求められているのです。
PCBを含む安定器の撤去費用と注意点について
中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)が全国一律で定めたPCB廃棄物の処理料金では、PCBを使用した安定器の処理費用は「1kgあたり3万240円(税込み)」とされています。
処理料金を算定するにあたっては、安定器の重量に搬入容器の重量が加算されます(JESCOの指定容器を使用する場合は所定の金額を差し引く)。また、処理施設へ運搬するためにかかる費用は別途発生することになります。
蛍光灯の安定器にPCBが使われているかどうかは、その器具を製造したメーカーに問い合わせて判別する必要があります。安定器に添付された銘板からメーカー名や型式、製造年やロット番号などを確認し、メーカーに問い合わせましょう。
ただし、こうした情報を読み取れない場合は判断が難しくなります。安定器を分解・解体して分析することでPCBの使用を判別することは可能ですが、その作業によってPCBの汚染が広がるリスクがあるため、不明な場合は高濃度PCB含有廃棄物とみなして処分を委託するのが望ましいとされています。
おわりに
PCBが大きく注目を集めるようになったきっかけは、昭和43年の「カネミ油症事件」です。脱臭工程で熱媒体として使われたPCBが米ぬか油に混入してしまい、西日本を中心に広域にわたって米ぬか油による食中毒が発生。その被害者はおよそ1万3000人にも上ったといわれています。
PCBの危険性を理解し、もしPCBが使われた可能性のある照明器具を目にすることがあれば、あわてることなく適切な手順で対応するようにしましょう。