農地バンク? 知らないと恥ずかしい「農地バンク」についてメリット・デメリットを合わせて解説
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日本国内で消費する食料をどのぐらい国産でまかなえているかということを示す食糧自給率は、重量を金額に換算した生産額ベースでは68%ですが、重量を供給熱量(カロリー)に換算した供給熱量(カロリー)ベースでは38%まで落ち込みます(いずれも2016年度の総合食糧自給率)。
この背景にある要素の一つが、日本の農業の衰退傾向です。その農業を活性化させて状況を改善するために生まれた制度が「農地バンク」ですが、農地バンクにはメリットもデメリットもあります。この仕組みについて基本的なところを理解しておきましょう。
農地バンクについて
「農地バンク」とは、不要になった農地を賃貸に出したいと考える所有者から農地を集めて、農地を借りたいと考える農業経営者に提供するための仕組みです。
農地バンクが生まれた背景には、現代の日本が抱える農業の衰退傾向という問題があります。若い世代の農業従事者がなかなか増えないまま既存の農業従事者が高齢化して農家が減り、それに比例するかのように耕作放棄地が増えています。
また、日本の農業は自作農への転換に伴って農地が細分化され、個人個人の所有する農地がパッチワークのように分散するようになりました。そのために生産効率を高めるのが難しいという問題もあります。
農地バンクは、こうした状況にある日本の農地を集積化して農業の生産効率を高められるようにします。そして農業経営の規模拡大を図り、農業への新規参入を促進するというのが狙いです。
農地バンクの仕組みについて
農地バンクは、各都道府県別に設置されている農地中間管理機構が窓口機関を受け持ちます。農地を貸し出したいと考える人は、この農地中間管理機構にその農地を登録します。
農地中間管理機構は登録された農地を確認し、農家に対して賃料を払って農地を借り上げます。そうすると、農地中間管理機構のもとで農地がある程度の規模にまとまることになります。
農地を借りたいと考えている人はそうした農地をチェックして、希望に合致する農地があれば農地中間管理機構に借り入れを申し出ます。そこで農地中間管理機構と借り主が期間や賃料などの相談を行い、合意に至れば貸し出しが行われます。
借り主が支払う賃料は、農地中間管理機構に一旦支払われ、そこから貸し出し元の農家に支払われていくという流れです。こうして貸したい人と借りたい人をつなぐマッチングが行われる農地バンクですが、実際の利用実績はそれほど伸びていません。
農地バンクのメリット・デメリット
農地バンクは、使われていない農地の有効活用になるのが大きなメリットです。手入れがされないままの農地は荒れてしまう一方ですが、必要な人に使ってもらえれば土地が生きるうえに所有者は賃料を得ることもできます。
先祖代々受け継がれてきた農地を売却するということに抵抗を感じる人は依然として多く、法律上でも厳しい制約がありますが、土地の貸し借りを行う農地バンクではその点も安心できます。
他方で、農地バンクには、貸し主にとっては思うほど高い賃料が得られないということも少なくないといったデメリットもあります。
農業バンクは土地の流動性を高めて多くの人や企業に農業参入を促すという目的があるため、農地を借りる人を優先した仕組みになっており、賃料も借り主の希望を聞いて決めることがほとんどなのです。
それでも、土地を遊ばせておくよりはいいと思うかもしれませんが、農地の集積化が進まないところではその成約率も低い状態です。また、最低10年、知らない人に貸し出すわけですから、貸し主にとっては不安を感じるということもあるようです。
おわりに
こうしたメリットとデメリットをもつ農地バンクという制度は、どちらかといえば問題点が目に付くことが多いとされ、現段階においてはその目的が十分に達成されているとはいいがたい仕組みです。
新しい制度であり、これから状況の改善がなされる可能性もありますが、政府の方針によっては制度自体が解消される可能性も考えられます。農地を貸したいと思う方も、農地を借り受けたいと考えている方も、農地バンクという仕組みの実状とメリット・デメリットを理解したうえで、検討する必要があるでしょう。