痛ましい事故を繰り返さないために! 知っておきたいブロック塀の安全性チェックの仕方や解体方法・費用を解説

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隣の家との境界や敷地の目隠しに設置するブロック塀。鉄筋の補助を受けながらコンクリートで固定されるブロック塀は頑丈ですが、時が経つにつれての老朽化は免れません。古くなったブロック塀は地震などで倒壊する危険があり、場合によっては解体・撤去が必要です。

劣化が進むと解体が必要となるものの費用がかかるため、おいそれとはふみきれないものですが、ずっとそのままというわけにはいきません。危険なブロック塀を簡易的にチェックするためのポイントを理解しながら、来るべきタイミングにそなえて解体方法やその費用の相場を心得ておきましょう。

古いブロック塀の地震による倒壊の危険性

家の塀に使っているブロック塀や隣家との境界に設定しているブロック塀は、侵入者や不要な視線を防ぎプライバシーと家の安全を守る役目を果たす“壁”になります。しかし、そうしたブロック塀も時間が経てば老朽化します。

コンクリートを使った頑丈なブロック塀でも、老朽化すればもろくなってしまいます。大きな地震などの災害が起こってしまうと、そうしたブロック塀は“壁”になるどころか、家や人を傷つける“危険物”に変わってしまう可能性が高まります。

またブロック塀の設置に際しては、高さや厚みなどの基準が法律で定められていますが、こうした基準を満たしていないブロック塀は、ちょっとした揺れでも倒壊する危険性があるといえます。ブロック塀の倒壊による損害を受ける※前に、身近なブロック塀の危険性を日頃からチェックしておきましょう。

地震により起こってしまった悲しい事故

家のまわりや街のさまざまなところに設置されているブロック塀は、一見すると頑丈そのものでそうそう崩れそうにないように思われるかもしれません。しかし、過去の地震では実際にブロック塀が崩れ、悲しい事故を引き起こしています。

2018年6月18日に発生した大阪府北部地震(大阪北部地震)では、複数の地域で最大震度6弱を観測し、各地で建物の倒壊や火災が発生しました。そして、高槻市の小学校では、プール沿いに設置されていた高さ2メートルほどのブロック塀が倒壊したのです。

地震が発生したのが朝8時前であったことから、学校周辺はまさに登校の時間帯。そうした状況で、小学4年生のお子さんが通路側に倒壊したブロック塀の下敷きになってしまいました。周囲の住人や学校の警備員が何とかブロック塀を持ち上げようとしたもののびくともせず、お子さんは残念ながら犠牲となりました。

阪神・淡路大震災でもブロック塀倒壊事故は起きていた

ブロック塀の危険性は今に始まったことではなく、以前から指摘されていたことでした。実際、大地震などの災害によるブロック塀の倒壊事故が発生したのも、大阪北部地震が初めてではありません。

宮城県仙台市を中心として大きな被害がもたらされた1978年6月の宮城県沖地震では、ブロック塀の倒壊多発が特徴の一つとして挙げられており、亡くなった16名のうち11名がブロック塀倒壊の犠牲となっています。

また、1995年1月に発生した阪神・淡路大震災では、ブロック塀などの被害がおよそ2,500か所にもおよび、その犠牲になったのは確認されただけでも14名とされています。このように、大地震などの災害ではブロック塀の被害が相次いでいるのです。

こうした事態を受けてブロック塀に関する法的規制は強化されており、前述の高槻市の小学校のブロック塀も建築基準法違反となるものでした。ところが、法定点検で見過ごされたり、危険性の指摘に対して市が対策を講じなかったりしたため、事故が発生してしまったのです。

ブロック塀の安全性チェックの仕方

ブロック塀の危険性を本格的に判断するには、専門家の調査などを受けるのが確実です。その前に、自分で簡易的にチェックするポイントとしては、下記のようなものがあります。

・ブロック塀が傾いていたり、ブロック塀にぐらついているところがあり、手で押すと揺れる
・ブロック塀が設置後30年以上経過している
・ブロック塀にひび割れがある(ひび割れから雨水が浸入して、補強に使われている鉄筋が錆びます)
・ブロック塀が石垣の上に設置されている(鉄筋などで補強・固定されていない懸念があります)
・ブロック塀が土留めとして使われている(土の重量が大きいと、それを支えるだけの強度が足りていないことがあります)
・ブロック塀の高さが2メートル(壁の厚さが10cm未満の場合)または2.2メートル(壁の厚さが15cm未満の場合)を超えている(壁の厚さに見合う高さの基準を超えており、強度に懸念があります)

ひとつでも該当する項目がある場合は、地震などの災害で倒壊する危険性が高いと考えられますので、専門家への相談を検討しましょう。

ブロック塀の解体方法・費用について

危険性の高いブロック塀は、専門家に相談したうえでブロック塀を解体するか、あるいは必要な修復を施すかのいずれかの対応が必要となります。ブロック塀を解体する場合は、工務店や解体業者などに依頼します。家屋を解体する予定があれば、合わせて解体業者に依頼することで手間と費用をおさえることができることも知っておくと良いでしょう。

ブロック塀の解体は、ハンマーや電動工具などを使って人が手作業で壊す方法と、重機を使って機械で壊す方法があります。規模が小さければ重機を運搬するより人手で解体したほうが早く安上がりとなるケースが多いですが、大規模なブロック塀の場合は人手で解体するのは大変なので重機を使うことになります。

ブロック塀の解体費用は塀の規模や状態、立地や解体方法によってケースバイケースですが、ある程度規模の大きい解体の場合、解体工事の費用や廃材の処分費用なども含めて1平方メートルあたり5000円から1万円弱が平均的な相場とされます。

全国で広がる解体・改修補助金制度

大阪北部地震の痛ましい事故を受け、全国の自治体からはブロック塀の所有者に対して安全点検を訴えかける広報が数多くなされました。そしてもう一つ、全国のさまざまな自治体で整備が進んでいるのが、ブロック塀の解体に関する補助金の制度です。

補助金の制度の有無や内容は自治体によって異なりますが、ブロック塀を撤去する際にかかる費用の4分の1から半分程度の補助を受けられるケースが多いようです。手続きの流れもさまざまですが、工事を行う前に申請して補助交付の決定を受ける必要があるのが一般的です。

ただし、補助金制度があるとしても、すべてのブロック塀の解体で補助を受けられるとは限りません。補助を受けられるブロック塀の条件として「倒壊する危険性が高いブロック塀の場合」「一定以上の高さのブロック塀の場合」などが設定されていることがあるのです。

ですので、まずは自治体でブロック塀の解体について相談し、補助金制度などについて詳しく話を聞いてみるといいでしょう。

おわりに

一見頑丈に見えるブロック塀も、その頑丈さを保つためにはメンテナンスとチェックが不可欠です。またメンテナンスしていたとしても、老朽化すれば倒壊の危険性が増すことになります。

確かに解体には費用がかかりますが、そのまま放置しておくのは危険です。自身や家族がけがをしたり家が壊れるのも問題ですが、ほかの人や近隣の住宅をトラブルに巻き込むようなことはあってはならないことです。

少しでも不安を感じたら放置せず専門家に相談をしましょう。そのうえで、解体が必要になったら解体業者などから見積もりをとるなどして検討し、解体工事をきちんと進めるようにしましょう。

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