違法だと知ってましたか? ミンチ解体の禁止理由と分別解体について

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建物を取り壊す解体工事には、さまざまな手法があります。たとえば、多く採用されている手法としては、重機による解体と人手による解体を併用する「重機併用手壊し工法」がありますが、状況によっては重機を使わず人の手のみで解体する「手壊し解体」が採用されることもあります。

ここまで読んで、「解体工事といえば、大きな重機だけで一気に取り壊していくんじゃないの?」と思う方もおられるかもしれませんが、実はそうした解体は今では禁止されているのです。そのことが意外と知られていない「ミンチ解体」と現在主流の「分別解体」について、みていきましょう。

ミンチ解体とは?

解体工事といえば、かつてはショベルカーなどの重機のみを使って建物を一気に取り壊しを進めていく工法がほとんどでした。この工法は「ミンチ解体」と呼ばれています。ミンチ解体のメリットは、なんといっても短い工期で解体工事を行える点にあります。

一般的な住宅を解体する場合、後述する「分別解体」では2週間前後かかる解体工事が、ミンチ解体であれば2〜3日ほどで行えるともいわれています。工期が短ければ人件費などの経費も安くおさまりますし、足場も不要であったことから、解体費用を安く済ませることができたのです。

そうしたことから数多く採用されていたミンチ解体ですが、今では法律で禁止されており、ミンチ解体を施行することはできないことになっています。それはどうしてなのでしょうか。

ミンチ解体が禁止になった理由について

ミンチ解体の特徴は、解体工事で出た廃材を分別せずに埋め立てる点にあります。建物を取り壊したあとは、木材の破片やコンクリートの瓦礫、金属やガラスといったさまざまな資材が廃棄物として出ることになります。ミンチ解体では、そうした廃材を文字どおりミンチ状に壊し、それらをまとめて埋め立て処分していたのです。

建築リサイクル法施工

廃材のなかには、きちんと対応すればリサイクル可能になる資材もあれば、アスベスト(石綿)のような有害物質が混在している恐れもあります。リサイクル可能な資源を埋め立ててしまうのはもったいないですし、有害物質をそのまま埋めてしまうのは危険です。

加えて、埋め立て処分を行える土地も限られています。そうした状況から、2002年に施行された「建設リサイクル法」により、ミンチ解体は原則禁止となりました。一部例外もありますが、例外に該当しないのにミンチ解体を行えば違法となり、罰則を科されることになります。

ミンチ解体による罰則は?

建設リサイクル法では以下のように定められています。

建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律

第十五条

都道府県知事は、対象建設工事受注者又は自主施工者が正当な理由がなくて分別解体等の適正な実施に必要な行為をしない場合において、分別解体等の適正な実施を確保するため特に必要があると認めるときは、基本方針(第四条第二項の規定により同条第一項の指針を公表した場合には、当該指針)を勘案して、当該対象建設工事受注者又は自主施工者に対し、分別解体等の方法の変更その他必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

解体工事を行うときは、ミンチ解体は禁止されています。工事において分別解体を行っていないとなれば、解体方法の変更や関連する措置をとれるということが、第十五条では定められています。

第二十条

都道府県知事は、対象建設工事受注者が正当な理由がなくて特定建設資材廃棄物の再資源化等の適正な実施に必要な行為をしない場合において、特定建設資材廃棄物の再資源化等の適正な実施を確保するため特に必要があると認めるときは、基本方針(第四条第二項の規定により同条第一項の指針を公表した場合には、当該指針)を勘案して、当該対象建設工事受注者に対し、特定建設資材廃棄物の再資源化等の方法の変更その他必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

解体工事で発生した産業廃棄物は、再資源として使えるのは資源化します。また産業廃棄物を処理するにしても、不法投棄を行わず適切に処理することが求められます。産業廃棄物を不適切な形で処理する業者がいれば、適切に処置するよう措置をとれるということが、第二十条では定められています。

第四十九条

第十五条又は第二十条の規定による命令に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。

第十五条と第二十条に反し、分別解体を行わず、ミンチ解体を行った業者に対しては、第四九条の定めにより、50万円以下の罰金に処せられます。

さらに家屋の解体を行うときは、業者に解体を依頼する施主が、解体工事開始7日前までに、解体計画表などを役所に届け出ないとなりません。この届け出を怠ると、20万円の罰金に処せられます。

建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律より

現在の解体法「分別解体」について

代わって、建設リサイクル法で義務づけられるようになったのが「分別」。一定規模以上の建物を解体する場合、解体工事で出たさまざまな建築資材や廃棄物を現場で分別し、廃棄または再資源化するということになりました。これが、現在ほとんどの解体工事で採用されている「分別解体」です。

分別解体では、人手による分別作業が必要となります。まずは事前準備として、建物の構造や周辺、残置物などを一つひとつ確認し、解体・分別作業をどのように進めていくかを計画します。そして足場を組み、養生を行いながら、分別が必要なものを重機による解体の前にできる限り取り除いておくのです。

具体的には、建物を重機で取り壊す前に屋根の瓦を下ろし、ガラスをすべて取り外します。室内のふすまや畳、浴室のタイルなどもすべて事前にはがし、壁材の奥に使われている断熱材もていねいにはがしていきます。こうした作業が必要になることから、ミンチ解体に比べると工期は長くなり、手作業の多さから人件費もかかります。

したがって、分別解体の費用はミンチ解体より高くなると思われがちですが、廃棄物の処分費用を比べると適切な分別を行うほうが非常に安価になるということも。複数の解体業者に見積もりを依頼するなどして、比較検討しましょう。

解体現場の廃棄物の種類

家屋を解体すると、建材が廃棄物として出てきます。庭木や梱包材以外の、コンクリート、金属、木材などは、すべて分別廃棄されます。解体した後の建材などはすべて廃棄物として処理されますが、産業廃棄物と一般廃棄物の2つに分かれます。

産業廃棄物

産業物処理法で定められた20種類の廃棄物が、産業廃棄物です。事業活動にともない生じた廃棄物であり、解体事業であれば、ブロック塀などのコンクリート、建材としての木材、トタン屋根などの金属、瓦や石膏ボード、さらに便器や浴槽、シンクなどの設備も産業廃棄物です。

一般廃棄物

一般廃棄物は産業廃棄物以外の廃棄物です。たとえば、紙くずや段ボール、木くずなどがあります。ただし家屋の中でどこに使っているかでも、産業廃棄物なのか、それとも一般廃棄物なのか違います。たとえば、木くずでも家屋の柱は産業廃棄物となり、木の机は一般廃棄物です。

分別解体で必要な手続き

解体工事では、施主が解体物所在地の役所に、書類の届け出を行います。届け出の必要な書類は以下の通りです。

  • 届出表
  • 分別解体等の計画表
  • 付近見取り図
  • 建築物全体がわかる写真
  • 配置図
  • 工程表

これらの書類を、解体工事開始7日前までに届け出ます。届出書は役所のホームページや窓口で受け取れます。計画表もホームページからダウンロード可能です。書き方がわからなければ、業者と相談しながら作成すると良いでしょう。書類作成と届け出を解体業者に依頼するときは、委任状も必要です。

解体業者としては、マニフェスト作成と処理内容の記録が必要です。これは解体で発生した産業廃棄物を、産廃業者に処理してもらうときに、依頼から処理までをすべて記録します。最終的に各業者からの確認の捺印をもって記録終了です。記録完了したマニフェストは、解体業者が5年間保管します。マニフェストは紙媒体でも電子媒体でもどちらでも構いません。

おわりに

現代の解体工事においても重機自体は数多くの場面で使われていますが、重機のみで一気に取り壊して廃棄物を分別しないミンチ解体は行うことができません。解体工事の見積もりを確認しながら、工事の方法や廃棄物の処理について不明な点があれば、納得できるまで確認しましょう。

見積もりを比較して、あまりにも安い見積もりを出している会社があれば注意しましょう。違法であるミンチ解体や廃棄物の不法投棄などによって、費用を安くおさえようとしているかもしれません。違法行為は工事会社だけでなく、施主が罰せられることもあります。解体工事を無事に終えるためには、信頼できる解体業者を選ぶことが大切です。

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