突然立ち退きが決定! 道路・土地収用の解体工事の流れと気になる解体費用について
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賃貸物件では、大家さんの都合で契約解除を求められて立ち退きを余儀なくされることがあります。借地権付きの土地に自分の持ち家を建てている場合も、契約期間満了や土地のオーナーから契約解除を求められるなどすれば、いずれは土地を返還して家を立ち退かなければなりません。
一方で、土地も建物も自分が所有していても、ある日突然立ち退きを求められることがあります。それはその土地が、「道路収用(土地収用)」「区画整理」の対象となる場合です。いざというときにあわてることのないよう、道路収用や区画整理とはどのようなものなのか、知っておきましょう。
目次
道路・土地収用とは?
国や地方自治体が、都市計画に基づいて新たな道路や堤防、貯水池、ダムなどを設置しようとする際に、工事範囲が個人の私有地に及ぶことがあります。その場合、国や地方自治体は、正当な補償を前提としてその土地を強制的に取得することができるとされています。
また日本の各地では、道路の幅を広げたり公園をつくったりするために市街地を整備する「土地区画整理事業」という公共事業も実施されています。この区画整理を行う際にも、土地の所有者は対象となる土地を強制的に収用されることがあります。
これが「道路収用(土地収用)」です。これらの土地収用は、国や地方自治体などが公共の利益となる事業を行うにあたって民法上の手段だけでは達成するのが困難である場合に、私人の財産権を強制的に取得するための手段として法律で定められているものです。
道路・土地収用法の対象となる事業とは
国が公共目的のために使用する土地が必要となった場合に、事業実施業者が土地所有者から買い取り、土地を取得します。いくらで買い取るか交渉を行いますが、金額や取得する範囲などで折り合いが付かないときは、正当な補償金を支払い、土地を強制的に取得できます。土地を強制取得できるよう手続きや保証内容を定めたのが、土地収用法です。
土地収用法の対象となるのは、たとえば新幹線沿線の土地を取得したいが、用地買収が上手くいかないような場所です。土地収用法では、土地の他に、土地に関する所有権以外、鉱業権や漁業権、建物のような定着物件、土石砂れきなども収用できます。
土地収用ができる事業の一例は、以下の通りです。
- 道路交通法による道路
- 河川法による河川や水路、貯水池など
- 石油パイプライン事業の施設
- 飛行機、航空保安施設、気象施設
- 学校教育法による学校
- ガス事業法によるガス工作物
- 火葬場
- 中央および地方卸売市場
- 国および地方公共団体の庁舎や公園
土地収用法には、対象となる事業は51種類定められています。ライフラインとして必要な設備、市民生活に必要な設備、公共の設備、国の関連設備などを建設運営する事業は、ほぼすべて対象となるのです。
手続きと流れ
事業内容やスケジュールの説明、交渉と進み、最後に契約し土地収用が完了です。通常以下の流れで土地収用が行われます。
- 国や地方自治体の起業者から土地所有者に対し説明会を開く
- 事業概要やスケジュール、補償方針を説明
- 起業者による土地測定と建物調査
- 調査に基づき調書作成、土地所有者に確認してもらう
- 土地所有者は調書に問題なければ署名押印する
- 起業者が補償内容決定、土地所有者に内容を説明
- 起業者と土地所有者、両者納得後に契約締結
- 土地所有者は土地や登記の引き渡し、起業者は補償を行う
起業者へ土地や登記の引き渡し、そして土地所有者への補償が完了して、土地収用手続きはすべて完了です。しかし、両者納得できず合意にいたらない時に、土地収用法に基づき、必要となる道路や土地を取得します。
起業者による土地収用では、土地所有者に対し補償を行います。補償は以下のような決まりに従います。
個別補償が原則であり、1つの土地に対し所有者が複数居る場合でも、ひとりひとりに対し補償します。補償は原則金銭での支払いであり、物品や付与での支払いは認められていません。土地収用によって、その土地の価格が上がるとしても、価格上昇分の利益と補償は相殺できません。補償の支払いは、土地所有者が請求し、2ヶ月以内に支払われます。
道路収用・区画整理での解体工事の流れについて
国や地方自治体が、道路収用(土地収用)や区画整理のために私有地の提供を求める場合も、いきなり最初から強制的に取得されてしまうというわけではありません。まずは、国や地方自治体が土地の所有者に対して事業の内容や補償内容を説明し、承諾を求める「任意交渉」が行われます。
任意交渉で合意に至ればその内容をもって契約を締結し、土地を引き渡すということになります。任意交渉の結果合意に至らない場合は、法律で定められた手順を経て、最終的に強制収用が行われることになります。しかしその場合も、土地の所有者に対しては立ち退きの対価としての補償があります。
土地を引き渡して立ち退く際には、建っている住居などを解体して更地にした状態での引き渡しを求められることが多いです。その場合、土地の所有者が解体工事を請け負う事業者(解体業者)に依頼するかたちで解体工事を実施することになります。
費用について
解体費用
解体工事にかかる費用は、立ち退きに伴う補償金の一部に含むかたちで国や地方自治体が負担するのが一般的です。ただしなかには、解体工事の実費を負担するというのではなく、解体工事に対する補償金として一律の金額が支払われ、その金額のなかで対応することを求められるケースもあるため注意が必要です。
いずれにしても、土地を更地にした状態で引き渡さなければならない場合には解体工事は土地の所有者が行うことになり、依頼する解体業者の選定も土地の所有者自身が対応しなければなりません。その際に必要となるのが、解体業者に現地調査を依頼して解体工事の見積もりを出してもらうことです。
多くの方にとって、解体工事を依頼するというのはそう何度も経験することではありません。そのため、どの解体業者に依頼するべきか迷うこともあるでしょう。解体業者の選定にあたっては2?3社の業者に見積もりを依頼して比較検討し、費用が安すぎたり高すぎたりするところを避けて信頼できる解体業者を選ぶことが重要です。
建て直しなどの費用
土地所有者が、その場所に建物を建設し住まいとして使っていれば、土地収容後は他の場所に引っ越さなければなりません。移転に関する費用も補償範囲です。
まずは、移転場所としてどこが適しているかということが問題になります。補償基準では妥当とされる場所とされており、買収地と同じような土地であり、移転にふさわしいと判断されれば、その土地への移転を行います。土地所有者が、移転にふさわしい土地を持っていればその場所に、持っていなければ土地を探し移転します。
補償される範囲は、新しい土地の価格はもちろんです。そのほか、建設する建物費用、門柱や庭石、排水設備、ガス設備など、敷地内に必要とされる工作物はすべて補償範囲となります。また、店舗であれば土地移転中は営業停止となるので、停止した期間分の利益保証もあります。さらに、引っ越し費用、建物が完成するまでの仮住まいの費用も補償範囲となっています。つまり、移転に伴う費用はほぼすべて補償されると考えておくと、間違いないでしょう。
おわりに
道路収用(土地収用)は決して他人事ではなく、ある日突然やってくるかもしれません。公共事業のためとはいえ、長年住み慣れた土地を提供しなければならないというのは、心理的な負担が大きいものです。加えて、土地を更地にするためには解体工事を行う必要もあり、現実的な負担も大きくなるでしょう。
そうしたなかで少しでも心理的な負担を減らし、経済的な負担も最低限におさえるためには、いざ解体工事を行うことになってもあわてずに対応することが求められます。複数の解体業者に見積もりを依頼して話をしていくことで、費用面だけでなく解体工事のさまざまなことについても理解が進むでしょう。