階段事故を防ぐためにも! 知っておきたい階段リフォームと解体工事について

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昔建てられたような家では、2階への階段が急勾配であることやステップが狭いことがよくあります。若いころはそうした階段を苦労なく上がり下がりすることができていても、年を重ねるとただでさえつらい階段の昇り降りがさらに難しくなることもあります。

小さいお子さんのいるご家庭では、階段でお子さんがけがをする心配もあるでしょう。そんなときは、心配や不安を放置せずに階段をリフォームして事故を防止するという選択肢を考えてみましょう。リフォームする際には解体工事が不可欠です。その面も含めて、階段のリフォームについて理解しておきましょう。

注意したい危険な階段について

階段は家の中で、危険が多く注意が必要な場所なんです。

危険が多い階段

建築基準法では、住宅に設置される階段の「蹴上げ(けあげ、階段1段の高さ)」は23cm以下、「踏み面(ふみづら、階段の奥行き(足を乗せる部分)」は15cm以上にすることと定められており、加えて階段の横幅が75cm以上であること、4m以内ごとに踊り場を設置することといった規定もあります。

しかし、これはあくまで最低基準。実際にこの基準の最低ラインで階段をつくると、勾配は55度を超え、非常に急なものになってしまいます。踏み面も15cmでは、乗せる足にも気を配らねばなりません。

築年数が経過した古い住宅では、急勾配の階段や踏み面の狭い階段が少なくありませんが、年を重ねると足が上がりづらくなり、蹴上げの高い階段でつまずくことが増える傾向にあります。階段を下るときに、狭い踏み面を踏み外して事故につながってしまうことも。そのほか、木材が傷んで床鳴りが発生している階段や、すべりやすい材質の階段、手すり・すべり止めのない階段、暗くて足もとがよく見えない階段なども、危険性が高まります。

転倒の原因は階段が上位に…

転倒しても若い人なら軽い怪我で済むことも多いですが、高齢者では骨折するケースもあります。高齢者の転倒事故は屋外ばかりではなく、屋内でも起きているのです。

平成22年度 高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果(※1)では、自宅内の転倒場所としては、リビングが20.5%と一番多く、玄関17.4%、階段10.3%、廊下8.3%と続きます。室内の転倒場所を見ると、階段は3番目と上位です。階段は段差があり高低差もあり、足を踏み外しやすい場所なので、転倒したら重傷を負う可能性が高いです。

国民生活センターの調査(※2)では、1992年8月~1996年7月の4年間で65歳以上の骨折事故は780件起きています。その中で骨折した場所は、階段が121件であり、全体の15.5%と一番多いです。足腰の弱い高齢者は少しの段差でも躓くこともあり、転倒を機に動けなくなり寝たきりとなる人、または要介護になる人もいます。

また、消費者庁でも、高齢者の不慮の事故の多くが「転倒・転落」によるものと発表しています(※3)。

参照元:
(※1)平成22年度 高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果(全体版)PDF形式 – 内閣府
(※2)滑る、つまずく、高齢者の骨折事故<抜粋>(発表情報)_国民生活センター
(※3)「転倒・転落」

階段リフォームのメリット・デメリットとは?

階段リフォームをする前にチェックしておくべきなのは、メリットとデメリットです。いい面も悪い面もしっかり把握したうえでリフォームを検討していきましょう。

メリット

古い階段は狭く、傾斜のきついものが多いものです。リフォームすれば、新しくなるうえ上り下りがしやすくなります。1段の高さを低くし、階段の奥行きを広くすれば、高齢者でも上り下りしやすいでしょう。これによって転倒する危険も少なくできます。

家の雰囲気を壊さず使いやすいリフォームできる場所なので、住み慣れた家の雰囲気をそのまま残せます。階段のリフォームは工期が短く費用が少ないので、家主にとって費用面での負担が少なく、すぐに機能やデザインを改善できます。

デメリット

リフォームは家の中の一部分のみ改修する方法なので、大がかりな間取り変更はできません。階段のリフォームであれば、たとえば木製の箱形階段をらせん階段にするようなことは難しいです。家の構造によっては、リフォームできる範囲に制約があります。そのために階段の構造によっては、自分の希望通りに改修できないこともあり、リフォーム内容を妥協しなければならないかもしれません。

どんな階段にリフォームできる?

階段のリフォームには、どんな種類があるのか知っていますか?皆さんがパッと思いつくのは、おそらくらせん階段や学校の階段のような階段でしょう。実は、階段にはさまざまな種類があります。特徴を良く知ったうえでお家に合った階段を選んでいきましょう。

種類が増えて安全な階段に

階段の種類は大きく分けると、直階段・かね折れ階段・折り返し階段・らせん階段・カーブ階段の5つです。

直階段

直線の階段であり、もっとも一般的です。構造がシンプルなために、費用が安いです。少ないスペースに階段を作る事が多く、急勾配になりやすい階段といえます。

かね折れ階段

途中に90度曲げたL字型の階段を取り入れているタイプです。踊り場があるので一気に下まで転倒することを防げます。また2階までに階段を作るときに、踊り場を設けてスペースを確保できるので、勾配を緩くできます。

折り返し階段

途中に180度曲げたU字型の階段を取り入れているタイプです。かね折れ階段と似ており、踊り場があるので、転倒しても一気に下まで落ちる心配がありません。直階段よりも安全性が高いですが、階段を作るときにはより広いスペースを必要とします。

らせん階段

らせん状になっている階段です。広いスペースを必要とせず、見た目がおしゃれです。複雑な構造なので、作るとすると費用が高くなります。またステップは中心が三角形になっており、上り下りしにくく、安全性は低いです。

カーブ階段

曲線を描くように上り下りする階段です。直線階段を緩やかに曲げたような構造の階段となります。直線階段よりもスペースを広く必要とするので、作るときには費用が高くなります。視覚的に豪華に見えるという特徴があります。

どの階段についても、安全性を高めるなら、現状の階段スペースを活かしながら勾配を緩やかにするでしょう。リフォームの場合、現在の階段より1~2段増やすことが多いです。現在の階段を全部取り払って、違う種類の階段にすることも可能ですが、大がかりな工事になるので、リフォーム費用が高くなります。

階段の配置場所でも大きく変わる

階段は勾配が緩ければ、それで良いかというとそうではありません。勾配が緩いほど、段数が多くなり、2階に行くまでの歩数が増えます。また踏長の奥行きが増えるので、大股に歩いて上らないとなりません。このため、段数を多くするほど、安全で使いやすい階段とはいえなくなるのです。

体格や性別によっても、自分に最適な階段の段数は違います。リフォーム検討段階で、実際にいくつかの階段を上り下りして、最適な種類を選びましょう。その際、サイズを測っておくのも忘れずに。

階段解体費用は意外と安い!

階段のリフォームと一言で言っても、塗料の塗り替えで見た目を美しくするもの、すべり止めやカーペット、照明を設置するような軽微なものもあります。古い木板をはがして新しい木板と交換するような工事や手すりの取り付けも、比較的短期間で終わることが多いものです。

一方で、階段の段差を増やしたい、勾配を緩やかなものにしたい、階段を新調したいといった場合のリフォームは大規模な工事になり、階段の場所を変更するようなリフォームでは建て替えに近いような大がかりな工事になることも。

そうした工事でリフォームの前段階として必要になるのが、今ある階段を解体・撤去することです。解体工事を行うというと高額な費用がかかるというイメージをおもちの方もおられるかもしれません。しかし、階段の解体費用は、実はそれほど高額ではないことが多いのです。

階段の状況や工事を行う住宅の周辺環境などによって必要となる工事も違ってくるため、費用はケースバイケースですが、既存の階段をすべて解体するような工事でもかかって10万円から15万円ほどとされています。

階段リフォームにかかる費用について

階段のリフォームで、既存の階段の表面に床材などを重ねて貼り付けるようなリフォームの場合、使う床材によってその価格は左右されますが、工事代も含めたリフォーム費用としては15万円から30万円程度というのが一般的な相場です。

階段を架け替えるようなリフォームのケースでは、既存の階段の解体工事が発生するほか、新たに使用する建材・商品の購入も必要となり、総額で安くて50万円はみることになります。工事範囲などによっては150万円ほどかかることも珍しくないでしょう。

そのほか、手すりを設置するリフォームや、階段下に収納を増やすリフォームなどもあります。これらも工事内容により、10万円弱で済むものから、20万円、30万円かかるものまであります。

階段リフォームはどこに依頼するの?

階段リフォームは、リフォーム業者に依頼します。近くの業者を探しても、またはインターネットで探しても良いでしょう。いくつものリフォーム業者を掲載しているようなサイトもあります。階段のリフォームを行える業者は、リフォーム専門業者、ハウスメーカー、設計事務所などがあります。

相見積もりを取る

業者を選ぶ前には、業者で見積もりをとって、費用がいくらかかるか確認します。ただし1社だけだと見積もり費用が高いのか安いのかわからないので、必ず相見積もりをとりましょう。相見積もりは、1社だけではなく、良さそうな業者をいくつかピックアップしてとることで、費用の比較ができます。

見積もりをもらったら、費用が予算に応じているか、明細はどうなっているか、どんな工事をするのかなどをしっかり確認します。費用一式と明細を書かない業者は、後で余計に費用を請求されるかもしれませんので注意が必要です。

実績を見る

リフォームを依頼するなら、実績は豊富な業者が良いでしょう。階段リフォームをしたことのないリフォーム業者に頼んでも、依頼主の希望通りの階段にできないかもしれません。希望通り満足のいくリフォームをしたいなら、階段リフォーム実績のある業者に依頼しましょう。

業者を選ぶときには、丁寧に接客してくれることは大切ですが、それ以上にこちらから質問したら、適切に回答してくれるか様子を見てみましょう。こちらの質問に対しはっきりと回答しないような業者は、適当にリフォームする恐れも…。保証やアフターサービスはあるのかも忘れずに確認してください。

おわりに

階段の使いやすさに大きく影響するのが、階段1段の高さを指す「蹴上げ(けあげ)」と階段の奥行き(足を乗せる部分のサイズ)を示す「踏み面(ふみづら)」で、一般的には、蹴上げが18cmから20cm、踏み面が20cmから22cmの階段が昇り降りしやすい階段とされています。

築年数が数十年経過しているような古いつくりの住宅では、急勾配の階段、1段の奥行きが狭い階段、足もとが暗い階段、手すりのない階段などが少なくありませんが、家族構成などによっては「使いづらい」を通り越して「危険」といえます。

「費用が高そうでなかなか決断できない」と考えている方もおられるかもしれませんが、専門家に相談したり現地調査・見積もりを依頼したりするなどしてみると、階段のリフォームは思いのほか現実的な選択肢として考えられるようになるかもしれません。

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