初めて聞いた人でもわかる! 改正マンション建て替え円滑化法について解説します。
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日本では戦後、実に数多くのマンションが建築されてきました。国土交通省の推計では、2017年末時点での分譲マンションのストック総数はおよそ644.1万戸。こうして増えてきた分譲マンションの多くは、今や老朽化という深刻な問題に直面し、建て替えの必要に迫られています。
特に、1981年以前の旧耐震基準で建てられたマンションでは耐震性能の不足から、その建て替えは喫緊の課題とされているのです。この状況を受けて2014年に施行されたのが「改正マンション建替え円滑化法」ですが、これはどのような法律なのでしょうか。
そもそもどんな法律なのか?
「改正マンション建替え円滑化法」は、正式名称を「マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律」といいます。この法律では、耐震性が不足しているマンションの対応を円滑に進めるための措置が講じられています。
大きなポイントとなるのが、「マンション敷地売却制度」です。これは、耐震性の不足や老朽化がみられるマンションについて、区分所有者の5分の4の同意があればマンションの解体や敷地の売却を可能とする制度です。
従来は、マンションの解体や敷地の売却には区分所有者全員の同意が必要とされており、建て替えの高いハードルとなっていました。しかしこの法律によってハードルが下がり、建物と敷地の売却がしやすくなったのです。
もう一つのポイントが、「容積率の緩和優遇措置」です。耐震性が不足しているマンションを建て替えて新築する場合、一定の条件を満たせば容積率制限が緩和され、建て替え前より戸数の多いマンションや床面積の広いマンションを建てられるようになりました。
なぜ改正マンション建て替え円滑化法ができたのか
それでは、なぜ「改正マンション建替え円滑化法」が施行されたのでしょうか。その背景にあるのは、大地震が発生する危険が高まっているにもかかわらず、耐震性が不足しているマンションが今も数多く存在し、その建て替えが進んでいないという状況です。
冒頭で述べた分譲マンションのストック総数約644.1万戸(2017年末時点)のうち、旧耐震基準に基づいて建設されたマンションストックは約104万戸。およそ16%のマンションで、耐震性が不足しているのです。
旧耐震基準で建設されたということは1981年以前に建てられており、築年数も相当経過しています。ということは老朽化も進んでいると考えられ、耐震性能の不足をはじめとする強度に対する懸念は深刻です。
このような状態で、懸念されている南海トラフ巨大地震や首都直下地震が発生すれば、住民の生命・財産の安全性が著しく脅かされるということになります。
そこで、マンションの建て替えなどを促して耐震化を押し進めるというのが、「改正マンション建替え円滑化法」の狙いです。そのため、各種措置の対象となるのは、建物の耐震診断の結果「耐震性が不足している危険な建物であり、解体が必要」と認定されるマンションに限られます。
法改正により期待できることとは?
「改正マンション建替え円滑化法」の施行でまず恩恵を受けられるのは、マンションの区分所有者です。「マンション敷地売却制度」では、区分所有者の5分の4の同意を得ることができればマンションの建物と敷地を売却できるようになり、その売却益で耐震性の十分な住宅へ引っ越すことも可能になります。
「容積率の緩和優遇措置」を利用してマンションを建て替える場合、戸数を多くしたり床面積を広げたりすることによってマンションの収益性を上げ、それによって建て替えに伴う区分所有者の経済負担を軽減することも見込めます。
こうした措置は、同時にディベロッパーなどの参入を促進します。事業として投資や開発を行うディベロッパーがマンションを買い取って建て替えれば、国としてはディベロッパーの事業参入によって耐震性の不足するマンションを減らすことができるというわけです。
おわりに
旧耐震基準で建てられたマンションであっても、すべてが大地震で倒壊するとは限りません。しかし、必要な耐震性能が不足しているのは確かであり、老朽化も進んでいることから、そのまま放置しておくわけにもいきません。
一足飛びにマンションの建て替えや売却といった話がまとまらないとしても、「改正マンション建替え円滑化法」をきっかけに耐震診断を受けて状態を把握すれば、そこから区分所有者が修繕や建て替え、売却などの検討を進めることも期待できます。
少子高齢化や地方の過疎化に伴う空き家の増加も深刻な社会問題と化しているなかで、分譲マンションの建て替えについても今後の動向が注目されます。