知らなかった船の解体! 船舶解体の裏側をお伝えします。

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釣りやマリンスポーツを趣味にしている方にとっては、プレジャーボートやクルーザーなどの船を所有するのが夢であるということもあるでしょう。マリーナで優雅にヨットを楽しむ方を見て、うらやましく感じたことがある方もおられるのではないでしょうか。

しかし、船を所有するのは簡単なことではなく、船本体の購入費用に加えて、燃料代や保険代、整備・点検などのメンテナンス費用、マリーナの係船料など、多額の維持費用がかかります。その維持費を捻出できず、船を解体せざるを得ないという方も少なくないのです。

船舶解体とは?

「船舶解体」とは、読んで字のごとく船舶を解体することを指し、古くなった船や壊れてしまい使えなくなった船を処分するため、あるいは維持できなくなり処分せざるを得なくなった船に対して行うのが一般的です。

船を処分する際には、時計や計器といった設備や再利用が可能な部品はあらかじめ取り外され、転売・再利用されます。船体にはガスバーナーなどで切れ目を入れ、鎖をウインチで引っ張るようにして引きちぎるような方法で切断します。

船の解体は特殊な技術が必要であり、特に大型の船の解体には大きな危険が伴います。そのため、どの解体業者でも請け負えるというものではなく、船舶を解体したいと思ってもお願いできる業者が見つからないということも珍しくありません。

身近な和船やオープンボートのリサイクル費用について

船のなかには、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)という素材で作られた船があります。このFRPは非常に強度の高い素材で製品寿命も長いことから、和船やオープンボートなどに重宝されてきましたが、いざ廃船するとなると一転して処理が難しいという問題を生みました。

そうした事情からFRP船の不法投棄が増加。事態を重く見た業界団体による検討のもと、2005年には広域的処理に係る特例の対象となる一般廃棄物に「廃FRP船」が追加、2007年からは「FRP船リサイクルシステム」が全国展開されるようになりました。

FRP船リサイクルシステムでは、FRPを使用したモーターボートやヨットなどの小型船舶を対象としており、船種(8種類)と船舶全長(1mごと)によってリサイクル料金と運搬料金が設定されています。

たとえば、全長4mの和船の場合、リサイクル料金は4万6700円、引取前清掃場所から指定引取場所までの運搬料金(参考例)は1万2100円(いずれも税抜き)です。運搬料金は地域や状況によって異なります。

環境に配慮した船舶解体のための法律が制定!

現在の船舶の解体は日本国内では行われず、労働コストが安価でリサイクル材料ニーズのある開発途上国などで実施されることが多いのが実状です。その結果、解体を請け負う発展途上国では環境汚染や労働災害が深刻化し、国際問題に発展しました。

そこで2009年に国際海事機関の下で採択されたのが、安全・環境に配慮した船舶の再資源化のための国際ルール「2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港条約(船舶再資源化香港条約(シップ・リサイクル条約))」です。

この国際ルールを受け、日本国内で具体化するための法律として、2018年に「船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律案」を閣議決定。安全・環境に配慮した船舶リサイクル制度を創設することとなりました。

具体的には、総トン数500トン(長さ約40m)以上の特定船舶について、リサイクルを行う業者を許可制とすることや、リサイクル目的で特定船舶を譲受・譲渡する場合の手続きなどを定めています。

おわりに

多くの方にとって、船舶を所有するという状況はそれほど身近なものではないかもしれません。ましてや、船を廃棄するというシチュエーションに直面することは少なく、その難しさを知る機会もあまりないのではないでしょうか。

いつかは船を持ちたいと考えている方、事業で船の所有を考える方にとっては、購入・維持の難しさだけでなく、船の解体処分の実態やその難易度について知っておくのは、非常に有効であるといえます。

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