3分でわかる! 解体工事の後の固定資産税について基本から解説

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せっかく相続した空き家も、誰も住む予定がなければそのまま放置され、老朽化していくにつれて、衛生面や防犯面、景観面などのさまざまな観点で周囲に悪影響を及ぼす懸念が生じます。とはいえ、家を解体するには解体工事の費用がかかります。

もう一つ気になるのは、解体工事を行ったあとの固定資産税です。この点についてよく聞かれるのが、「住宅を解体すると固定資産税が6倍になる」ということでしょう。これは本当なのでしょうか。それを理解するために、固定資産税について基本的なところからみていきましょう。

更地にすると固定資産税が高くなる? そもそも固定資産税とは何か?

「固定資産税」とは、土地や住宅といった不動産を所有している方に課税される税金です。この固定資産税は、毎年1月1日の不動産所有状況によって納税義務が生じ、税金は市区町村に支払います。

固定資産税の税額は、その不動産の「固定資産評価額(課税標準額)」に1.4%をかけた金額です。この固定資産評価額は、その不動産の種類(土地の地目など)や広さ、立地などによって異なり、各市区町村が決めるものです。

そして、土地の固定資産税に影響するのが、その土地に住宅が建っているかどうかという点です。住宅が建っている土地(住宅用地)は、200平方メートルまでの住宅用地は固定資産税額が更地の6分の1に、200平方メートル超の住宅用地では超えた部分の税額が更地の3分の1になるという軽減措置を受けることができるのです。

固定資産税が安くなるケースについて

住宅を解体してしまうと、前述の固定資産税の軽減措置を受けることができなくなります。しかし、本当に税額が一気に6倍になるかといえば、そうとは限りません。むしろ、空き家の解体前に比べて、固定資産税の額が安くなることもあり得るのです。

固定資産税が急に大きく増えてしまうと税負担が非常に重くなってしまうため、税額がだんだん増えるように調整することで税負担を適切なものにおさめる「負担調整措置」という仕組みがあります。これが適用されると、その土地の実際の課税標準額から計算される税額に対して減額がなされます。加えて、住宅を解体すれば固定資産税が課されるのは土地のみとなります。

したがって、[解体工事前の土地にかかっていた固定資産税]+[解体工事前の住宅にかかっていた固定資産税]より[解体工事のあと、土地にかかる固定資産税]が安くなれば、結果として固定資産税の総額は安くなるということになります。

解体せずに空家のままで残す? 空家と更地の固定資産税比較

解体工事のあとの固定資産税がいくらになるかを確認するには、実際に固定資産税を計算してみるのがいいでしょう。固定資産税の計算は各市区町村で異なる場合がありますが、ここでは固定資産税の基本的な計算式[課税標準額×標準税率1.4%]で考えます。

たとえば、150平方メートルの土地に住宅が建っており、土地の課税標準額が1500万円、住宅の課税標準額が500万円である場合、解体工事前の土地にかかる固定資産税は[課税標準額1500万円×優遇措置1/6×税率1.4%=3万5000円]、住宅にかかる固定資産税は[課税標準額500万円×税率1.4%=7万円]となります。

対して、解体工事後の土地は非住宅用地として課税されることになります。この場合、前述の計算式にあった[優遇措置1/6]がなくなりますが、反対に税負担を軽減して調整するための計算が加わることになります。このパーセンテージは個別に判断されますが、ここでは70%とします。

その場合の解体工事後の土地にかかる固定資産税は、[課税標準額1500万円×軽減措置70%×税率1.4%=14万7000円]。住宅にかかっていた固定資産税はゼロになりますから、固定資産税の増額は差し引き4万2000円ということになるのです。

おわりに

解体工事前後での固定資産税額の変化は、思ったより変わらないということも少なくなく、解体工事前より安くなることすらあります。このように固定資産税の額を試算してみると、そうしたことが数字で確認できます。

もちろん、家を解体するかどうかは固定資産税だけで決まるものではありませんが、なんとなく「固定資産税が高くなると聞いたから」というイメージで判断を保留しているような場合は、こうして理解を深めていくことで、その後にとれる選択肢もかなり変わってくるでしょう。

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