「擁壁」って何て読むの?意外と知らない擁壁施工・解体と費用について

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「高低差のある土地に家を建てたい」「地盤沈下や土地の傾斜などの危険に備えて」土地を強くして家を建て替えたい」……そうした場合に、コンクリートなどを使って土地の傾斜面に壁を作り、土の流れを遮断して土砂崩れを防ぐのが「擁壁」です。

この擁壁は日本で古くから活用されており、擁壁の上に家が建っているということも珍しくありません。しかし、擁壁も永久にその堅牢性を保てるとは限らず解体を迫られることもあります、家の建て替えに際して擁壁も建て替える必要が生じることもあります。そんな擁壁の解体・施工には意外と費用がかかるものです。

日本には擁壁が多い? 擁壁の歴史

現在の擁壁はコンクリートが用いられるのが一般的ですが、かつては石を積んで擁壁とする「石積み擁壁」も多用されており、日本の各地に建てられた城郭には石垣というかたちでの石積み擁壁が多く活用されてきました。日本特有の地形を生かす努力に、石垣は不可欠だったのです。

活用の過程では、その時代時代に適応した素材や、擁壁を作るためのさまざまな工法も確立されてきました。そして現在はも、平らでない土地を平らにして有効活用したり家の地盤を強化する目的で、擁壁が活用されています。

擁壁の知られざる効果

擁壁施工のメリットはいくつかありますが、代表的なものは「土地の高低差をならして平らにする」「傾斜のある土地で土の流れを遮断し、土砂崩れなどの災害を防止する」といったものがあります。

擁壁施工と一言で言っても、用いられる材料や施工の方法にはさまざまな選択肢があります。たとえば材料でいえば、コンクリート造りのものや、鉄筋とコンクリートを使っているもの、石を積み上げて連結にセメントを使うものなどがあり、用いる素材によって擁壁の性質が異なります。

擁壁で一般的なコンクリート造りの場合の施工方法としては、施工現場で生コンクリートの打設を行う「現場打ちコンクリート」や、ブロック状の材料を使って擁壁を構築する「プレキャスト擁壁」などがあります。「現場打ちコンクリート」は複雑な形状にも対応しやすく、「プレキャスト擁壁」は品質を担保しやすく短期間で施工しやすいといったメリットがあります。

擁壁の施工・解体にかかる費用

どういった擁壁にするかについては、予算や土地の状態などに応じて適した材料や工法を選ぶことになり、それによって擁壁の施工費用が変わってきます。一般的な相場の目安は擁壁1平方メートルあたり1万円から2万円とされています。施工する場所の状況や施工条件によっては対応すべき内容が追加され、費用が増えることもあります。

擁壁を解体する場合にも費用がかかります。解体もまた、工事を行う立地、解体する擁壁の規模などの諸条件によってかかる費用はさまざまです。擁壁に使われていた材料によって取り壊すための重機なども変わってきますし、解体して出た廃棄物の運搬や処分方法も異なります。解体に足場が必要となれば、その分の費用もかかります。

いずれも、施工や解体を行う会社に現地調査に来てもらい、見積もりを出してもらうのが確実です。その場合は複数の会社に見積もりを依頼し、対応内容や料金の違いを比べてみることが大切です。

安全確認をしよう

頑丈に見える擁壁も、老朽化によって倒壊・崩壊の危険をはらんでいることもあります。ひび割れがないか、つなぎ目がずれて隙間ができていないか、傾いているところがないかなど、まずは見た目で確認してみましょう。もう少し詳しく確認するには、国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート」を使うとわかりやすいです。

さらにきちんと安全診断を行うには、構造物や地盤を調査する専門の会社に調査を依頼するのが確実です。その場合は10万円程度かかることが多いようです。ハウスメーカー経由でも依頼できることがありますので、家の建築を前提とした安全診断であれば相談してみるのも手です。

おわりに

擁壁は、一見単なる壁のようにも思われますが、堅牢な擁壁にするには緻密な計算が必要です。同様に、擁壁を解体する場合もただ取り壊せばいいというものではなく、擁壁の倒壊やせき止められた土の流出などに十分注意して工事を行わなければ、事故につながってしまいます。

そうした面でも安全の確認は必要ですし、工事に伴う騒音や振動をおさえて近隣への迷惑を最小限にとどめる対応も重要です。擁壁の施工・解体工事に際しては、十分に現地調査をおこなったうえで、安全を確認しながら進めてもらうようにしましょう。

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