解体工事で行う「お祓い」「地鎮祭」……。覚えておきたい儀式の意味や費用まとめ

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住宅を建てる際は、その土地を司る神々に祈り、許しと土地の平安堅固を得、工事の無事を祈願する儀式「地鎮祭」を行うのが一般的です。

一方、建物を解体する際は、神仏に関する習わしや、解体工事を行う前に執り行う「お祓い」「魂抜き」「地鎮祭」などの儀式があります。

では、仏壇や神棚、井戸などの処分を伴う解体工事の場合は、どうすればいいのでしょうか?地鎮祭などの儀式の説明とあわせて詳しく解説します。

解体工事の前後には神仏に関する習わしがある

日本では「八百万の神」という言葉に代表されるように、さまざまなものに神々が宿っているという考え方があります。土地や建物についても例外ではありません。

そうしたなかで解体工事を行うにあたっては、取り壊す建物に感謝の意を伝え、工事の無事と今後の繁栄を願う儀式を行う習わしがあります。

特に、仏壇や神棚、井戸などは「神仏(魂)が宿るもの」とされ、移動させたり壊したりする際にはきちんと手順をふまないと厄災がふりかかると考えられているため、儀式を行うのが通例です。

お祓い、魂抜き、地鎮祭について

解体工事に関係する儀式としては、「お祓い」「魂抜き」「地鎮祭」などが挙げられるでしょう。

「お祓い」は、長きにわたって住んだ家や土地に感謝するとともに、解体工事の無事を願う「安全祈願」として行われるのが一般的です。

解体工事に伴って仏壇や神棚、井戸などを移動・処分する場合には、お祓いの中でも「魂抜き」という儀式が必要とされています。仏壇の魂抜きはお寺の僧侶に、神棚の魂抜きは神社の神主に依頼します。井戸はどちらでも対応可能なのだとか。

解体工事が終わって土地が更地になったら、改めてそれまでの建物に感謝を伝え、その後に始まる工事の無事や今後の繁栄を願う「地鎮祭」という儀式を行うのが通例。地鎮祭には、その土地を司る神に土地利用の許可を得るという意味もあり、大切なものです。

そしてもちろん、いずれの儀式も費用がかかります。魂抜きの場合、対象となるものの状態によっても異なりますが、小さいもので5000円から3万円程度、大きいもので4万円から5万円前後が相場です。

地鎮祭は、神職への支払い、施工業者への支払い、自ら配るための菓子折りや弁当代などで、10万円から20万円程度みておくと安心でしょう。

地鎮祭の流れについて

一般的な地鎮祭は、まずは神主の挨拶から始まり、これからどのような手順で地鎮祭を進めるかの説明があります。その後、水で手を清め、神主が参列者やお供え物をお祓いして清める儀式を行ったら、神様を祭壇にお迎えします。参列者は、頭を下げてお迎えしましょう。

神様をお迎えしたら、お酒と水が入った容器を開けて神様にお供え物を献上し、工事について神様に報告するとともに安全・繁栄を祈願する祝詞奏上(のりとそうじょう・祝詞を声に出して読み上げること)が行われます。続いて、敷地の四隅と中央を神主が清めたら、工事の施主・設計者・施工会社の代表者が盛り砂に儀式を行う「地鎮」の儀を行います。

最後に、神前に玉串を捧げ、お酒と水の入った容器を閉じて神様にお帰りいただきます。神様にお供えした御神酒を参列者全員でいただいて、地鎮祭は終了です。全体で30分程度を見込んでおきましょう。

これらは義務なのか?

こうした儀式は神仏に関連するものであり、その必要性が工事の手順として不可欠というわけでもなければ、法的な義務が課されているわけでもないものです。したがって、必ず行わなければならないというものではありません。

また、施主の宗教観によって行うかどうかの判断は分かれますし、費用や時間がかかるという点でも義務でないならしたくないと考える方もいるでしょう。施主として必要ないと判断すれば、行わなくても問題はないのです。

一方で、家族や近しい親族に「儀式を行うべきだ」と考える方がいれば、十分に相談したうえで判断することが求められます。特に住宅の建て替えに伴う解体の場合、その後も長く住むことになるわけですから、不要な後悔や不安を引きずるようなことは避けたいですよね。

何かあってから「あのときやっておけば……」と思うくらいなら、多少費用と時間をかけてでも行っておくという考え方もあります。

さらに、こうした儀式を執り行うことで安心して工事を行えるようになるという解体業者や施工業者の方の声もあるのだとか。儀式を行うかどうかは、こうした関係者がきちんと話し合ったうえで判断する必要があるといえます。

地鎮祭について施工会社の考え

前述のとおり、地鎮祭の実施は義務ではなく、実施するかどうかも基本的には施主の判断で決めて差し支えないものです。しかし、施主としては地鎮祭を行うべきかどうか、悩んでしまいますよね。

そんな施主を数多く見ている施工会社は、地鎮祭についてどのように考えているのか——。これもまたケースバイケースケースですが、一般的な傾向としては「地鎮祭を行うに越したことはない」と考える施工会社が多いようです。

地鎮祭を行うにあたってはご近所に挨拶まわりをすることが多く、そうした準備をとおして施主や施工会社の心の準備も整っていきます。そうしたことが、工事を適切に進めるためのいいきっかけになるという側面があるのです。

何より、地鎮祭は工事の安全を祈願するものですから、心理的な安心感も働くでしょう。地鎮祭を行わないからといって、施工会社の心証や対応が変わるということは基本的にはないと考えられますが、施主が地鎮祭を行う判断をするのは、施工会社にとってはありがたいことといえます。

地鎮祭をやらなくても避けるべき土地はある

中古の物件を購入して家を建て替えるようなケースでは、その土地や解体する家がいろいろな影響を受けていると考える方は少なくありません。そうしたケースでは、「地鎮祭を行わずに工事したら、あとで“不幸”なことが起こるのではないか」と考えるのも不思議はないでしょう。

一言で“不幸”といってもさまざまですが、いろいろな原因から工事後によくないことが起こることはあり得ます。そうした“不幸”を避けるためには、地鎮祭実施の有無と並行して、購入する土地の選び方についても考えておく必要があるでしょう。

諸説ありますが、よく言われるのは、道の行き止まりにある土地や変わった形をしている土地には“悪い気”が溜まりやすく、避けたほうがいいというものです。現実的な問題としても、行き止まりの場所は車の通行が難しいですし、変わった形の土地は建物が建てづらくなるというデメリットがあります。

そのほか、沼や水辺の近くは避けたほうがいいという声も聞かれます。これもまた、こわい思いをしたことがある人がいるという“事例”もさることながら、現実として地震や水害などの災害に対する懸念は考慮しておくべきでしょう。

おわりに

お祓いや地鎮祭といった儀式は、神仏に関する宗教的な要素を前提としたものです。

そのため、非科学的であるととらえる方もいれば、古くから伝わる伝統的なものであり尊重すべきだと考える方もいらっしゃいます。地域によっては、そうした儀式が「常識」として根付いているということもあるでしょう。

大切なのは施主や家族の気持ちですが、解体工事には施工業者や近隣住民などの関係者も多く、こうした「気持ち」の問題は、工事をスムーズに進め、その土地に気持ちよく住み続けるためには意外と重要な要素でもあります。

ですから、軽々に判断せず、きちんと考えて相談したうえで判断するようにしましょう。

近年は簡略化した形で行う儀式という選択肢もありますので、そうした情報なども調べておくといいでしょう。

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